近年は、電子書籍などの便利で手軽な手法が身近になり、紙の書籍を読む機会が少しずつ減っているという方もいらっしゃるかもしれません。ですが、紙の手触りやインクの匂い、手に伝わる本の重みなど、紙の本だからこその魅力は代えがたいものがあります。そこで今回は、読書の秋にぴったりのブックライブラリーを備える温泉宿を全国から厳選しました。
目 次
1.書物のある暮らしを形にした、箱根のブックホテルで大人をひと休み
箱根本箱(神奈川県/箱根)

箱根登山鉄道・中強羅駅より徒歩約4分「箱根本箱」は“本のある暮らし”をテーマにしたインタラクティブ・メディアホテルです。吹き抜けのラウンジには約12,000冊の本が所狭しと並び、本好きの大人をときめかせてくれます(原則、小学高学年以上が宿泊可)。

フロントや2階のサロン、地下とそれぞれグラデーションでジャンル分けがなされており、好きなジャンルを深掘ったり、手に取ったことのない世界への扉を開くことができます。それぞれ意匠が異なる全18室には、温泉露天風呂と各界で活躍する方々が選んだ本を紹介する人気企画「わたしの選書」を形にした「あの人の本箱」が備わります。温もり溢れる客室や、風が心地よいテラスで読書に耽りたいですね。

レストランでは、オーガニック&クレンジングをテーマにした体に嬉しい自然派イタリアンをご賞味ください。ゆっくりと時間をかけて噛みしめる滋味深さに心まで満たされるでしょう。
箱根本箱
神奈川県/箱根
2.宮島と瀬戸を見晴らす眺めの良い宿の、秘密基地で本を読み耽る快楽
庭園の宿 石亭(広島県/廿日市・宮浜温泉)

車で広島市内より約40分の「庭園の宿 石亭」は、緩やかな斜面に約1,500坪の敷地を構え、眼下に宮島と瀬戸を見晴らす眺めの良い宿です。世界各国の専門家に選出される、日本庭園のランキングに選ばれた回遊式庭園は宿の誇り。

温泉は、野趣溢れる岩造りの露天風呂のほか、木の温もりが嬉しい屋内風呂を備えています。食事は、瀬戸の小魚や小貝を中心に、山の恵みも取り入れた料理に舌鼓。ソムリエ、唎酒師が薦めるお酒でマリアージュを楽しみたいですね。

庭に突き出すように高床式で造られた「大観(TAIKAN)」は、広がりのあるワイドビューの絶景が非日常へと誘ってくれることでしょう。実は、この下には「吸吐文庫 super bunko」と名付けられた宿自慢のライブラリーがあります。書棚は、小説をはじめ美術や建築、料理、漫画など、多彩なラインナップです。どこか秘密基地のような雰囲気が漂う空間で、スコッチやワインを片手に読書に耽りたいものですね。
庭園の宿 石亭
広島県/廿日市・宮浜温泉
3.裏磐梯の絶景と鳥の歌、星の瞬きに癒されながら読書する幸せ
裏磐梯高原ホテル(福島県/裏磐梯)

磐越西線猪苗代駅から無料送迎シャトルで約30分、五色沼のひとつ弥六沼のほど近くに佇む「裏磐梯高原ホテル」は、磐梯山の絶景を望むリゾートホテルです。敷地内より湧き出る63.4度の源泉に、磐梯山の伏流水を加水した“源泉(加水)掛け流し”の温泉は、やわらかな肌触りで、ゆっくり浸かれます。

アーティスティックで開放感のある「ライブラリーラウンジ」は、宿泊者のみの特権。無料のコーヒーや紅茶をいただきながら読書に親しめるほか、双眼鏡や天体望遠鏡も備え、バードウォッチングや天体観測も楽しめます。

クラシカルで格調高い「スイート【磐梯山側】」をはじめ、1958年(昭和33年)の創業から、歴史を重ねたホテルならではの重厚な落ち着きが客室からも感じられます。食事は、地元野菜をふんだんに用いた本格フレンチのフルコース「裏磐梯フレンチ」や、旬の食材と会津地方の郷土料理を取り入れた会席料理を堪能できます。
裏磐梯高原ホテル
福島県/裏磐梯
4.優雅で静謐な設えの中、甲州自慢のワインと森閑に酔う心地よさ
笛吹川温泉 坐忘(山梨県/笛吹川)

車で、中央自動車道勝沼ICより塩山方面へ約20分。笛吹川のほど近くに佇む「笛吹川温泉 坐忘」は、とろりとした泉質の源泉掛け流しの湯が楽しめるスモールラグジュアリーな宿です。

日本の伝統色から着想したという優雅な「別邸離れ」や、それぞれが独立した数奇屋造りの「本館離れ」など、多彩な客室も魅力。2023年2月、本館にサウナ付和洋室が加わるなど、進化し続けています。現存する日本最古のワイナリーと言われる「まるき葡萄酒」のツアーも、この施設ならではの楽しみ。

畳の上にソファーや椅子を配した「ライブラリー」で、山梨ゆかりの本やワイン、懐石料理、お花などに関連する蔵書を手に取りながら、まるき葡萄酒やソフトドリンクをフリーでいただけるのも嬉しいですね。端正な造りの食事処「懐石 まる喜」で、心尽くしの“山のごちそう”と甲州ワインとのマリアージュに酔いしれたいものですね。
笛吹川温泉 坐忘
山梨県/笛吹川
5.信州の文化を守り受け継ぐ温泉宿で、書に囲まれ過ごす贅沢感
創業大正十五年 蓼科 親湯温泉(長野県/蓼科温泉)

車で、中央道諏訪ICよりビーナスライン経由で約30分。滝之湯川の畔に立ち、渓流沿いに設えた5つの絶景露天風呂が自慢の「創業大正十五年 蓼科 親湯温泉」。大正末期から営む宿とゆかりの深い文人の名を冠した「蓼科倶楽部」の客室は、モダンでクラシカルな佇まいが魅力です。

圧巻は、約30,000冊の蔵書を誇る「みすずLounge & Bar」と「岩波の回廊」。みすず書房の社主が長野県茅野の出身であり、岩波文庫の創業者もまた同県諏訪出身であることから叶った、奇跡のようなライブラリーです。宿はその昔、情報交換の場であり、地域文化の発信地であったことを守り、受け継ぐ宿の心意気が伝わってきますね。

知的好奇心を満たしたら、信州の山の幸をふんだんに用いた、和フレンチがベースの「蓼科 山キュイジーヌ」 でお腹も満たしましょう。清らかな水が磨いた信州諏訪の地酒とあわせながら、じっくり美味しさを噛みしめたいですね。
創業大正十五年 蓼科 親湯温泉
長野県/蓼科温泉
心静かに本のページをめくり、知識を蓄えていく時間は今の慌ただしい時代において、ある意味でとても贅沢なことかもしれません。魂を満たすために、温泉に浸かり、書に親しむ……そんな安らぎに溢れた秋旅に出かけてみてはいかがですか。












