戦前の日本に誕生し、西洋のホテルのライフスタイルを具現化してきた「クラシックホテル」。全国各地にあるクラシックホテルは、現在の日本のホテル文化の礎を築き、歴史と伝統を今に伝えています。今回は東日本にあるクラシックホテルを4軒ご紹介。レトロな雰囲気に浸る、時間旅行に出かけてみませんか。
目 次
1.明治の趣を感じる、日本最古のクラシックリゾートホテル
日光金谷ホテル(栃木県/日光)

自然と文化を兼ね備えた日本屈指の景勝地・日光。1873年にこの地に創業した「日光金谷ホテル」は、日本最古のクラシックリゾートホテルです。随所に和の意匠が散りばめられた館内は西洋の家具や備品が溶け込み、明治の趣を感じられるでしょう。

日光が国内外の要人の社交の場として発展してからというもの、英国皇太子をはじめとした外国王室や国内宮家、さらにはアインシュタインやヘレン・ケラーなど、数えきれないほどの賓客を迎え入れてきました。建物は明治期に建てられた本館と新館の後に、昭和初期に別館、昭和30年代に第二新館が増築され、それぞれに分かれた客室は全部で71室になります。

本館2階に位置する 「メインダイニングルーム」は、明治時代にホテルのロビーだった場所を改装して造られました。柱頭彫刻や明治時代の装飾品で彩られた格調高い空間でいただけるのは、歴代の料理長から受け継がれてきた伝統のフランス料理。「虹鱒のソテー金谷風」や「大正コロッケット」など100 年以上続くメニューを、味わってみては。

本館1階に位置するバー「デイサイト」は、真空管アンプから流れるジャズが醸し出す独特な雰囲気を放つ、大人の隠れ家のような場所。シングルモルトウィスキーを常時200種類以上取り揃えるなど、お酒の種類も豊富。フランク・ロイド・ライトの設計とも伝えられる、大谷石で造られた暖炉の揺らめく炎を眺めながら、優雅なひとときを過ごしましょう。
日光金谷ホテル
栃木県/日光
2.爽やかなテラスで味わう伝統のロイヤルミルクティー
万平ホテル(長野県/軽井沢)

1764年に誕生した旅籠「亀屋」を起源とする「万平ホテル」。都心から近い避暑地として外国人客からの需要が高まったことを受け、1894年に軽井沢初の西洋式ホテルとして生まれ変わりました。以来、移転や増築を経て高原リゾートの先駆けとして、現在まで愛され続けています。

ホテルには築年数や趣が異なる館が5つと、ファミリーの宿泊に便利なコテージも。なかでも1936年(昭和11年)築のアルプス館には、床の間を配した和と洋が調和するクラシックツインルームを完備。磨りガラスの照明や格子戸、網代壁などからクラッシックホテルの醍醐味を感じられるでしょう。また、館内の史料室には常連だったジョン・レノンが弾いたピアノや、田中角栄とヘンリー・キッシンジャーが会談の際に座った椅子など、貴重な展示も。館内の至る所でホテルの歴史や伝統が垣間見えます。

館内には、和・洋・中のレストランを用意。四季の食材を使った中国料理店「萬山楼」、豊富な品揃えと繊細な味わいの京料理が自慢の「割烹 熊魚菴(ゆうぎょあん)」など、それぞれの味・素材・見た目にもこだわった料理がいただけます。その中でも、古き良き社交場時代の面影を残す「メインダイニングルーム」で提供されるのは、創業時からのレシピを現代風にアレンジしたフランス料理。代々受け継がれてきた伝統の味を堪能ください。

ジョン・レノン夫妻に愛されたことでも有名な「カフェテラス」では、ジョン自ら直伝したというロイヤルミルクティーが味わえます。夏には大きな窓ガラスが取り外され、爽やかな軽井沢の風が吹き渡るティールームです。美しい緑を望むテラスで、人気のアップルパイと伝統のロイヤルミルクティーを満喫してみて。
万平ホテル
長野県/軽井沢
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3.雄大な海と山に囲まれた伊豆・川奈に佇むクラシックリゾートホテル
川奈ホテル(静岡県/川奈)

1936年に大倉財閥二代目総帥・大倉喜七郎によって創業された「川奈ホテル」。「品位ある外国人のための国際社交場を日本につくる」という思いから、雄大な海と山に囲まれた伊豆・川奈に建設されました。内装の細部にまでこだわりが行き届いた本館は、国の登録有形文化財にも登録され、昭和天皇や上皇上皇后両陛下をはじめ、海外の著名人などにも親しまれてきました。

伝統を守りながらも、進化し続けている「川奈ホテル」。昭和 初期の近代建築の魅力はそのままに、滞在価値の高い空間造りを目指し、非日常と特別感を感じられるような改装を実施。例えば、74.6平米のゆったりとした造りの 新本館客室「オーシャンビュースイート【禁煙】」。ブルーを基調としたお部屋の目の前には相模灘が広がり、四季折々に表情を変える前庭の景色を楽しめます。他にもトランドルベッドを導入した「オーシャンビュースーペリアカルテット【禁煙】」など、滞在に合わせて客室を選ぶことが可能です。

ラウンジ「サンパーラー」は、明るい雰囲気が印象的。大きく開かれたガラス窓からは、おだやかな相模灘を一望できます。ホテルの隠れた名物「オムライス」は、1954年にマリリン・モンローがジョー・ディマジオとの新婚旅行で訪れた際、ルームサービスで2回もオーダーしたという逸品です。他にもアフタヌーンティーやホテルメイドのケーキも好評なので、滞在中に味わってみては。

自然の地形を最大限に活かした自慢のゴルフ場は、2015年にノーベル医学生理学賞を受賞した大村智博士が、受賞のきっかけとなる微生物を発見した場所としても話題に。米国ゴルフマガジンの「世界ゴルフ100選」にも選ばれた「富士コース」は、国内のみならず世界中のゴルファーを魅了し続けています。
川奈ホテル
静岡県/川奈
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4.伝統を重んじつつ進化をし続ける日本初の本格的リゾートホテル
富士屋ホテル(神奈川県/宮ノ下)

1878年に、箱根・宮ノ下に開業した日本初の本格的リゾートホテル「富士屋ホテル」。創業者の山口仙之助が築いた一棟の洋館から、時代にあったサービスを提供するために数々の増改築を経て、今では壮大な建築群のホテルへと進化を遂げました。1997年には建物の多くが登録有形文化財にも登録されています。

“何世代にもわたる人々とともに、そこにあり続けるという価値”を伝えるため、2018年から2020年にかけて行われた“平成の大改修”では、「本館」「西洋館」「花御殿」「フォレスト・ウイング」全ての客室棟がリニューアルされました。お部屋は重ねた時間の風合いを損なうことなく、老朽化していた設備を一新。室内は落ち着いた色合いでまとめられているので、ゆったりとした時間を過ごせるでしょう。

1930年に竣工した「メインダイニングルーム・ザ・フジヤ」は、90年以上にわたり多くのゲストを魅了し続けてきた場所。日本アルプスの高山植物636種以上が描かれた、天井高6メートルの折り上げ格天井、欄間や柱に潜む様々な彫刻が、格式あるレストランを彩ります。朝食はフルサービスブレックファスト、ランチとディナータイムは創業当時のレシピを受け継ぐ洗練されたフレンチを満喫ください

ホテルの誕生から現在までの道のりを、貴重な史料とともに学べる「富士屋ホテル史料展示室」が、大規模改修の際に「ホテル・ミュージアム」としてリニューアル。創業当時を振り返ることができる品々とともに、改修により新たに発見された経営資料や書簡、改築まで至らなかった建築計画や図面なども展示されています。歴代の経営者たちがより良いホテルにするために試行錯誤した様子を知ることができ「富士屋ホテル」での滞在がより思い出深いものになること請け合いです。
富士屋ホテル
神奈川県/宮ノ下
西洋と日本の文化が心地よく交わり、積み重ねた年月が建物や調度品を美しく輝かせる。そんなクラシックホテルでの滞在は、さながら時間旅行のようなひとときを過ごせます。
かつてそこにいた人々の足音や息遣いが聞こえてくるような、クラシックホテルでしか味わうことのできない雰囲気をぜひ、体験してみてはいかがでしょうか。
※他にも、日本を代表するクラシックホテルをこちらの記事でご紹介しています。
〇歴史と伝統を今に伝えるクラシックホテル 首都圏編
〇歴史と伝統を今に伝えるクラシックホテル 西日本編












