戦前の日本に誕生し、西洋のホテルのライフスタイルを具現化してきた「クラシックホテル」。全国各地にあるクラシックホテルは、現在の日本のホテル文化の礎を築き、歴史と伝統を今に伝えています。今回は首都圏にあるクラシックホテルを2軒ご紹介。レトロな雰囲気に浸る、時間旅行に出かけてみませんか。
1.1927年開業、歴史と異国情緒を感じられる横浜のクラシックホテル
ホテルニューグランド (神奈川県/横浜・山下町)

1927年に誕生した「ホテルニューグランド」は、横浜・山下公園前に位置するクラシックホテルです。創業時に現在の本館を設計したのは、銀座「和光」などを手掛けたことで知られる建築家・渡辺仁。細部に海外のエッセンスを散りばめた造りで、1992年には横浜市認定歴史的建造物となり、2007年には経済産業省が選んだ近代化産業遺産の認定を受けるなど、今もなお多くの方に親しまれ続けています。

ホテルのシンボルでもある本館の大階段は、写真撮影にもおすすめのスポット。ニューグランドブルーの絨毯が敷かれたクラシカルな空間は、建物が積み重ねてきた歴史を感じさせます。大階段の先、本館2階の「ザ・ロビー」には隠れた名品「キングスチェア」が。開業当時からのアンティークで、肘掛け部分に天使の彫刻があしらわれた優美なデザイン。艶のある優しい天使の表情に、思わず見入ってしまうかもしれません。

歴史を感じる建物が有名な「ホテルニューグランド」ですが、ホテル発祥の伝統料理が多いことでも知られています。体調を崩したゲストのためにと、初代総料理長のサリー・ワイルが即興で創作した一皿は「シーフード ドリア」としてホテルの名物料理のひとつになりました。「スパゲッティ ナポリタン」や「プリン・ア・ラ・モード」など、今や世の中の定番となったホテルの伝統料理は、本館1階の「ザ・カフェ」でいただくことができます。

かつて迎賓館として開業した「ホテルニューグランド」は、世界の歴史に名を刻む人物を数多く迎え入れてきました。連合国軍最高司令官のダグラス・マッカーサー元帥もその一人。また、横浜を舞台にした『霧笛』をはじめ『鞍馬天狗』などの名作を残した作家・大佛次郎は、約10年間このホテルを創作活動の場としていました。数々の偉人たちが訪れた空間に想いを馳せるのも、ひとつの楽しみ方かもしれません。

本館1階にある「バー シーガーディアンⅡ」は、英国調の正統派バー。重厚感のある雰囲気が魅力で、これまで様々なメディアに登場してきました。“カクテル・ブックの古典中の古典”と評される『サヴォイ・カクテルブック』で紹介された「ヨコハマ」は、横浜に立つこのホテルにぴったりの一杯。せっかくなら、ほかの場所でなく横浜の地で楽しみたいと注文される方も多いのだそう。世界的にも有名なカクテルを、BGMに揺られながらじっくりと味わってみて。
ホテルニューグランド
神奈川県/横浜・山下町
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2.開業100年以上、東京駅丸の内駅舎にある唯一無二の歴史的空間
東京ステーションホテル(東京都/東京駅丸の内南口直結)

1915年、建築家・辰野金吾の設計によって東京駅の敷地内に誕生した「東京ステーションホテル」。2003年には赤レンガ造りの東京駅丸の内駅舎が国の重要文化財に指定され、その後2007年から約5年間の保存・復原工事や内装のリニューアルを経て現在の姿になりました。多くの人々が行き交う東京の玄関口に位置するホテルとして、今もなおその歴史を刻み続けるクラシックホテルです。

昭和の文豪・松本清張、川端康成、江戸川乱歩などから愛され、様々なエピソードが存在するこちらのホテル。客室のメモ帳が原稿用紙のデザインになっているなど、細かな部分で遊び心を感じられます。高い天井と駅舎の形を活かした客室は、2階建てのメゾネットタイプや駅舎ドーム内が望めるお部屋などを完備。ホテルの伝統とエレガントさが薫る、上品な空間です。

創業当時の赤レンガと木の質感が活きるオーセンティックな雰囲気の「Bar Oak(バー オーク)」では、伝説のバーテンダー・杉本壽(ひさし)氏が今も週に数日シェイカーを振っています。メニューには、東京駅開業75周年を記念して杉本氏が考案したカクテル「東京駅」 や、ホテルの100周年記念カクテル「1915」などもご用意。ホテルの歴史を語るうえで欠かせない特別な一杯を、心ゆくまで堪能しましょう。

ホテルの最上階、東京駅丸の内駅舎の中央・大屋根裏にあるのは、ゲストラウンジ「アトリウム」。東京駅丸の内駅舎の保存・復原工事によって生まれた400平米を超えるスペースで、最大9メートルという高い天井が開放感たっぷり。創建当時のレンガ構造が受け継がれた空間では、朝食やディナーをいただくことができます。特に評判の朝食は、人気のブッフェスタイル。新鮮な野菜をはじめ、手の込んだ魚や肉料理、ライブステーションで作られる卵料理など、100種類以上のアイテムが並びます。厳選食材を使用したメニューで、優雅なモーニングタイムを過ごしてみて。
東京ステーションホテル
東京都/東京駅丸の内南口直結
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西洋と日本の文化が心地よく交わり、積み重ねた年月が建物や調度品を美しく輝かせる。そんなクラシックホテルでの滞在は、さながら時間旅行のようなひとときを過ごせます。かつてそこにいた人々の足音や息遣いが聞こえてくるような、クラシックホテルでしか味わうことのできない雰囲気をぜひ、体験してみてはいかがでしょうか。
※他にも、日本を代表するクラシックホテルをこちらの記事でご紹介しています。
〇 歴史を今に伝えるクラシックホテル 東日本編
〇 歴史を今に伝えるクラシックホテル 西日本編












